技研公開2008、研究発表(良い音・感動する音)について&昨年との相違点
●一昨日の23日、計画休暇(年休)を急遽取ってNHK技研公開2008を見てきた。(10時の開場から18時に延びた終了時間まで、やはり普通に見ると1日いっぱいかかる)
というのも、研究発表で聞きたいものがあったから。
■ 研究発表 7 午後3:20〜3:45 「良い音・感動する音」と感じる条件の分析 - 感動という観点による音の評価方法の検討 - 大出 訓史 (人間・情報)
だが、まだまだこれからというところだった。
ある質問者からは、もっと科学的な手法をとらないとだめだ、NHKにはそれができるのだからと厳しく指摘されていた。(感動語によるアンケート調査である点や、さらに例えば実験のなかの1つで、同じ楽曲の異なる演奏者による演奏での比較でなく、同じ演奏を異なるミキシングエンジニアを呼んできて比較するとかすべき、といったような)
しかし、パネル展示のコーナーで、おそらく同じ質問者の方が再び細かな追及をすると、説明員の人から、そう単純にはいかないんですよ、と反論されていた。
(追記:僕は、第1歩として、そもそも感動とは、という根本から、(手法は徹底が難しいとしても)概観から始めたことは、まずはよろしいのではと思いますが。実際、個別問題は難しいですよ。下に記したような、微妙な曲の一部要素について等は、主観的直観をもとに仮設を設定し、試験する、ということから広げていかないと、科学者然とした単純な態度「だけ」では見誤る・見落とすことが多いはず。仮設と検証、また遡って仮設を見直したり見方を変えたり増やしたりしての試行錯誤の道のりは大変なはず。何と言っても対象が広範にわたるので。)
展示のほうでグループリーダーの安藤氏に聞いた話では、大阪学院大の谷口先生(大学の教員紹介ページ)(著書10冊ほどとのこと。(Amazon検索リスト))の協力を得て(客員教授)やっているとのこと。(「感動」という概念が欧米には無いらしい。強いimpressionというような表現くらい)
とにかく複雑で難しい点が多い。しかし誰もやっていないのでやらないといけないということで始めたとのこと。
個人的意見として、音楽の中でも、音響的に、共鳴(残響音だけでなくresonanceのほう)の具合によって直接脳に顕著な反応を起こす場合もある(坂本龍一のEnergy Flow(ウラBTTBほか所収)での脳波測定実験をやっていた以前の番組(民放)の例から感じたこと、つまり主題の2番目の本格的提示のタイミングでα波がものすごく盛んに出ていたことと、主観的にすばらしさを強く感じる部分の印象の一致。)、また、掲示されていた感動語の分類表*に無い、知的覚醒や気づきを得る喜びといった側面もあるのでは?といったことをお話ししておいた。また別の説明員の方には、22.2chマルチチャンネル音響システムについて、不自然で派手な音作りが多いことに苦言と改善を要望しておいた。
*(注)感動は大きく分けて「受容的」「表出的」の2つに分類され、後者はさらに「正の感情」「中立・負の感情」の2つに分類されるというもので、12の項目が挙げられている。(クリックで拡大) その他パネル展示より




そもそもこの研究は、「高臨場感音響システムで「本当によい音」を実現するために、人が良い音を感じる要因について詳細な調査と解析を行って」おり、そこでまず、「音の印象が極端に強い場合、すなわち感動する要因が音に限定される場合について、その仕組みを知る研究に取り組んで」いるとのこと。(配布プリントより)
<研究発表での質疑応答のメモ>
Q 番組制作での音作りはプロデューサやミキサーがコントロールしているのだから・・・
A 必ずしもいいと言えるか?苦情の多くがミキシングに関するもの。
Q 音楽に焦点?自然の音などは?
A 最終的にすべて。ただ、進んでいるのが音楽。先行研究に倣った。
Q 物理特性、音響心理学的に、経時的マスキングを考慮した音響効果関数などは?
A ゆくゆくはできればいいなと思っている。
Q 放送にどのように活用?
A 最適なパラメータの決定、ダウンサイジング(22.2chなど)これらはコンテンツに依存するので番組制作に貢献できたらな、と
Q 違う音源の比較をされているが無意味では?海外のミキサーと日本のミキサーを呼んできて、なら意味がある。
Q 言葉を使っている。言葉に依存すると差が出にくい。ポリグラフでα波など生理的現象のほうがいいのでは?特に日本では国民性により本当のことを話さないこともある。
A 言葉を使わないと、変動要因が多すぎる。大規模にやりたいが時間がかかる。統計的にやりたい。
Q NHKであればそれができる(環境にある)のだから、そういう方向でやってほしい。
Q 趣味が良いという表現があるが、(合う人が)そこに行けばいい。任せればよいのでは?
A 個人適応は無理。ターゲットを絞り込みたい。
(以上意味不明のつながりもありますが手元のメモの範囲で取り急ぎアップ)
●その他展示については、昨年(2007)と比べ、特別に大きな項目としては新しいものはなく、性能改善されている、展示の説明が詳しくなった等のものが多かった。
ただ、今年のWebでの詳細説明がまだない(今年は作らないつもりか?)ので、昨年のものを参照するとよいと思います。
以下、特に印象深いもののみコメント。
<2>3300万画素3板式カラー撮像実験
→フル解像度のスーパーハイビジョン対応が画素ずらしでなく1枚でようやく実現
(以下は自分の質問事項)
Q 視野全体を広角でとる場合、レンズの色収差は問題にならないですか?
A 計算で補正してます。(その工夫はいろいろあるらしい)
Q (デモ映像の)左下の新聞がボケてますが・・・
A 加工していないので(収差がそのまま)
<4>スーパーハイビジョン符号化システム
→去年よりレートが少し下がった(映像118Mbps、音声は1.92Mbps)
→分割境界を目立たなくする処理を加えた。(当面の対策で、最終的にはちゃんと分割でない処理にするとのこと)
<5>高度BSデジタル放送システム
ここでは説明員の方とかなり話し込み、衛星を用いたダウンロードサービスについて「暗号化された未購入のものの蓄積のみも許可し、見たいときにいつでも購入手続できるようにしてほしい」ということを要望として確かに受け取ってもらった。
ただ、ユーザ側からの要望を言っても、映画会社等の権利者が、とか、費用が、とかいったネガティブ弁解が相変わらずきかれた。
<24>番組配信サービスのセキュリティ技術
にあるようなさまざまな技術開発(不正流通者特定技術、P2Pで融通し合うサービス等)はされているのに、それが実際のサービスになかなか繋がらない現実がある。もっとアピールしてほしいと要望。
(追記:余談ながら、P2Pサービスのメニュー画面を表示しているプラズマテレビ、説明員が番組(『瞳』)を選んで再生を始めたら、うっすらとだがはっきりとメニューの文字がタイトル映像の背景に見える。「これ、焼き付きですか?」と尋ねると、「はい。そんなに長い間映してないんですけどね。液晶だったら問題ないんですけど。」「ますますPDPの分が悪くなりますね。これからこういうメニュー画面を使うことが多くなるのに。」といったやりとりが。
それにしても、直接関係ないがダビング10無期限延期(記事の例1、2)は、権利者団体との議論の平行線の帰結として、何とも言えず脱力する。怒る気力もなくなってくる。
<15>スーパーハイビジョンシアター
(プロジェクタはまだ最新のフル画素でなく従来通り2台使った画素ずらしのタイプ)
今年からは、日本遺産と題し、これから充実させていくとのことで、まず今回は「冬」。デモ的強調を抑え、まともな造りに少しシフトしてきて、良い傾向です。
<16>インテグラル立体テレビ
昨年に続き鑑賞、質問で疑問が少し減った。
現状、スーパーハイビジョンカメラと同プロジェクタを使っても、182×140画素。視野角24.5度。
レンズアレイ、隙間を狭くして粒状感を低減できないか?と提案。(蜂の巣状に近い形にして)
カメラを複数台並べて画素数を増やすことはできないか?と聞くと、可能ですよ、とのこと。(視点の問題から不可能かと思っていたが)
それなら、やってほしい。でもデータ処理が膨大・・・・
<追記><17>究極の音再現を目指した次世代デバイス
超薄型スピーカー、今年は新素材の電場駆動型エラストマーで。ただし低音の周波数特性は、100Hzあたりからとのことで、もっと低い音は、振幅が必要だろうからどうするのですか?ときくと、面積を大きくすればできるとのこと。
<追記>(昨年は時間がなくて見られなかった)案内冊子に紹介の無い「アクシビジョン」(奥行き情報を取得するシステム)について、機器展示と解説パネルを発見。(紹介が無いのはNHKエンジニアリングサービスという、研究機関としての技研とは別の、商売のための会社のブースにあるものだから。)
(文字が解読しにくくてすみません。)

なお、昨年は最後のパネル展示がゆっくり見られなかったが、今年は終了が18時に延長されて、助かった。最後のアンケートも、いつも既に引き上げられていたところ、初めて記入できた。(メモパッドをいただきました。)
参考:本ブログの昨年分の記事(計5エントリー)
技研公開2007、インテグラル立体テレビ<要点レビューとQ&Aその1>


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